どうやって馬車に乗ったのか、馬車の中で何を考えていたのか、頭がボーーッとしたまま気がつけば実家に到着していた。
 外はもうすっかり真っ暗になっている。


「いつの間に家に……」


 そんなことを呟きながら馬車を降りると、家の前にフレッド王子が立っているのが見えた。
 外にいるからか、あの黒くボサボサのウイッグを被っている。



 ……やっぱりあの男の子に似てる。



「フレッド殿下。どうして外にいらっしゃるのですか?」


 小走りで駆け寄ると、フレッド王子は長い前髪をかき上げて私の姿を確認するかのようにこちらを向いた。


「また招待されるのは申し訳ないから、ここで待たせてもらった。反対されたが、俺が譲らなかったら許可してもらえた」

「そんな……」


 1階の窓から、こちらを心配そうに覗いている母と目が合う。
 フレッド王子に何かあったらと心配して見守っていたに違いない。

 私が来たとわかって安心したのか、母はニコッと微笑むと手を振って窓のそばから離れた。