腹黒王子様の機嫌を治してから実家に帰りたいところだけれど、そろそろ時間も遅くなってきている。
とりあえず今日はもう行かなくちゃ。
「殿下。私はそろそろ……」
そこまで言ったとき、急に殿下の腕が私の背中に伸びてきた。
グイッと力強く引かれて、殿下の胸に顔を押しつけられる。
え!?
気がつけば、私はジョシュア殿下に抱きしめられていた。
ギュウッと強く抱きしめられていて、全然抜け出せない。
「ジョシュア殿下!?」
「…………」
何? なんで私、殿下に抱きしめられてるの!?
手で押し返そうとしてもビクともしない。
ジョシュア殿下の体温が伝わってきたのか、どんどん体が熱くなっていく。
「あの……殿下……!」
「…………くな」
「え?」
「行くな」
「…………」
今のは本当にジョシュア殿下の声……?
真っ先にそう思ってしまうほど、今まで聞いたことのないような力のない弱い声。
……ううん。こんな声を、昔どこかで聞いた気もする。
ジョシュア殿下は私の肩に顔を埋めているため、なんとか届くくらいの小さな声だった。



