結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜【電子書籍化決定】


 腹黒王子様の機嫌を治してから実家に帰りたいところだけれど、そろそろ時間も遅くなってきている。



 とりあえず今日はもう行かなくちゃ。



「殿下。私はそろそろ……」


 そこまで言ったとき、急に殿下の腕が私の背中に伸びてきた。
 グイッと力強く引かれて、殿下の胸に顔を押しつけられる。



 え!?



 気がつけば、私はジョシュア殿下に抱きしめられていた。
 ギュウッと強く抱きしめられていて、全然抜け出せない。


「ジョシュア殿下!?」

「…………」



 何? なんで私、殿下に抱きしめられてるの!?



 手で押し返そうとしてもビクともしない。
 ジョシュア殿下の体温が伝わってきたのか、どんどん体が熱くなっていく。


「あの……殿下……!」

「…………くな」

「え?」

「行くな」

「…………」



 今のは本当にジョシュア殿下の声……?



 真っ先にそう思ってしまうほど、今まで聞いたことのないような力のない弱い声。
 ……ううん。こんな声を、昔どこかで聞いた気もする。

 ジョシュア殿下は私の肩に顔を(うず)めているため、なんとか届くくらいの小さな声だった。