周りに見えないように胸元にくっつけていた木登りの写真。
 私はそれをさらに隠すようにしてギュッと握りしめる。


「曲がるから返して」

「これは私の写真です」

「俺がアイリス様に貸してもらった写真だから返さないと」

「私から話しておくので大丈夫です!」

「いや。俺が持っていく」


 なんとか隙をついて写真を取ろうとする王子と、その手から逃れるように腕や体を動かしている私。
 静かな攻防が続いたとき、背後から聞き慣れた声が聞こえた。


「……何してるの? セアラ秘書官」

「! ジョシュア殿下!」


 振り返ると、不自然な笑顔を顔に貼りつけたジョシュア殿下がこちらに向かってゆっくり歩いてくるのが見えた。