こっちって、その机の向こうには殿下の椅子しかないわよね?
不思議に思いながらも殿下の机を回ってみると、そこには普段はない簡易椅子が置かれていた。
……ウソでしょ。もしかして、殿下が自分で用意したの?
私をいじめるために、わざわざ自分の椅子の隣に新しい椅子を用意するなんて……。
ジョシュア殿下の無駄な行動力に呆れながらも、素直にそれに従う。
ニヤニヤと笑みをこぼす殿下に見られながら、私はおとなしく椅子に座った。
……なんて楽しそうな顔なのかしら。
それに、こんなに近くに座らせるなんて……本当にご自分で私の鼻に薬を塗るつもりなのね。
さっきはハッキリ断られてしまったけれど、念のためにもう一度最後の悪あがきをしてみる。



