「セアラ秘書官?」

「ちょっと待ってください。あの、受け入れるとは言いましたが、それはあくまで殿下が私を選んだ場合で……」

「わかってますよ。だからセアラ秘書官の書類を……」

「そ、それは私が殿下に説明してからやりますから。だから、あの……とりあえずこの件はまだジョシュア殿下にもマーガレット殿下にも言わないでください」


 トユン事務官は残念そうに眉を下げたけれど、私の必死のお願いにNOとは言えなかったらしい。
 渋々「わかりました」と頷いてくれた。



 いくら政略結婚の覚悟ができているとはいえ……やっぱり恥ずかしいわ!
 あの殿下と私が、夫婦になるかもだなんて!

 それならまだ会ったこともない人のほうがいいくらいだわ!



 政略結婚の覚悟はできてるものの、そんなにすぐには切り替えられない。



 もう少し……もう少しだけ待って!
 殿下が本当に私を好きなのかも含めて、もっとちゃんと考えなきゃ……。



 心の中で言い訳を並べて、なんとか落ち着くように息を整えた。