「おはようございます。セアラ秘書官」

「あ。おはようございます。トユン事務官」

 
 次の日の朝。
 いつものように、2人で本日の予定を確認する。


「今日も予定の変更はないみたいですね」

「そうですね」

「あの……殿下の妃候補の方は決まりましたか?」

「…………いいえ。まだです」


 おずおずと申し訳なさそうに尋ねてくるトユン事務官に、少し間を置いて返事をする。
 自分が振った仕事で、私が苦労しているのを見て罪悪感を抱いているのだろう。


「殿下は今もセアラ秘書官が好きとかいう冗談を言っているのですか?」

「ええ。まだ飽きないみたいです」


 ジョシュア殿下が「おはよう。愛しいセアラよ」なんて挨拶をした日の、トユン事務官の顔は今でもよく覚えている。

 顔面蒼白で、床が揺れてるんじゃないかってほど体をガタガタと震わせていた。

 誤解されないように、私はすぐにあれは殿下の嫌がらせであると伝えたのだ。