「では、失礼します」


 そう声をかけてから、そっと殿下の腕に手を回す。
 見た目よりガッシリしていて温かい、男性の腕の感触。

 触れた瞬間、殿下の腕がビクッと少し震えた気がした。



 ……あら? そういえば、私……誰かにエスコートしてもらうのは初めてかも。



 王宮で開かれたパーティーでは、いつも裏方として殿下のサポートをしたりと走り回っていた。
 こうして男性の腕に掴まって歩いたことすらなかった事実に、今さら驚いてしまう。

 ドキドキドキ……



 いやだわ。なんだか緊張してるみたい。