「殿下。申し訳ございません。やっぱりこのジャケットはお返しいたします」
 
「……なんで?」

 
 ジョシュア殿下が不快そうに眉をひそめる。

 
「会場を歩くには目立ちますから。見つかるかわかりませんが、一応候補のご令嬢がいるか捜してみようと思います」

「捜す必要ないよ。セアラはこのまますぐに帰って」
 
「必要あります! 経歴や家柄だけでなく、性格や雰囲気も知っておきたいんです」
 
「なんでセアラがそこまでするの?」
 
「殿下が真剣に選んでくださらないから、私が真剣に選ぶ必要があるんです!」
 
「!」

 
 ジョシュア殿下を責めるような言い方になってしまったけど、本音なので仕方ない。


 
 ここまでハッキリ言えば、納得してくれるでしょう。