バルコニー(ここ)にはあまり人はいないし、君が誰かもわかっていないはずだから気にせずに羽織れ」

「はい……」

 
 
 たしかに、この姿でいるのがバークリー家の娘だなんてわかるわけないわね。



 ジョシュア殿下の言葉を聞いて、ひとまずホッと胸を撫で下ろす。



 それにしても、なんで殿下はこのジャケットを羽織らせたのかしら?
 肌が出すぎているって言っていたけど、もしかして露出の多いドレスがお嫌いなの?

 長く一緒にいるけど初めて知ったわ。

 ……でも、待って。
 ここは暗いけど、会場は眩しいくらいに明るいのよ。
 いくら誰だかわからないとしても、やっぱりこの格好で歩くわけにはいかないわ。