「ねぇ。せっかくだから、バルコニーに行かない? ずっと端っこにいたらもったいないだろう?」
 
「い、いえ。私はここで大丈夫です」


 
 今日の目的は、候補の令嬢たちと話すことだもの。
 まぁ、私の出会いも少しは期待していたけど、こんなに簡単に女性の身体に触る方はちょっと……って、ええ!?


 
 ハッキリ断ったというのに、なぜか今は男性に背中を押されて歩かされていた。
 横に並んで歩いているように見せて、実際には左の腕で私の背中をグイグイと強引に押している。

 
「ちょ……っと、あの! 私は行かないって言って……」
 
「まぁまぁ。そんなこと言わずに」

 
 ゾクッ
 
 断っているのに、笑顔で流されてしまう。
 行きたくもないのに、その力強さで無理やり連れて行かれてしまう。
 
 自分の意見を完全に無視されている今の状況が怖くて、背筋がブルッと震えた。