その人物は手にグラスを2つ持っていて、ニコニコしながらこちらに近づいてきた。
 私より少し年上くらいの若い男性だ。

 
「やあ。楽しんでいますか?」
 
「えっ。あ、はい」
 
「こんなに端っこにいるということは、もしかして初めて?」

 
 男性は片方のグラスを私に差し出すと、にっこりと優しく尋ねてきた。
 落ち着いた様子から、20代後半くらいかと思われる。

 
「ええ。今夜が初めてで……」
 
「そうか。なら、わからないこととかあったらなんでも聞いて。1人では不安だったでしょう?」
 
「ありがとうございます」


 
 親切な方なのね。
 ……でも、さっきからやけに肩や背中に手が触れている気がするわ。
 私の気のせいではないわよね?