「じゃあなんでこんな場所にいるんだろうな」
「!!!」
壁にぶつかったことに気を取られている間に、ジョシュア殿下がすぐ目の前に立っていた。
私の体は壁と殿下に挟まれている上に、殿下の手が壁についていて抜け出すことができない。
いやあああ!! 捕まった!!
なんだかよくわからないけど怖いわっ!!
ジョシュア殿下は手だけではなく、片方の靴の先を壁につけた。
出入口側をさらに厳重に囲まれた状態になり、完全に逃げ場がなくなる。
私を追い詰めたはずの殿下の瞳は、なぜか輝きをなくしたかのように暗く澱んで見えた。
「……1つ聞きたいんだけど、俺がセアラの中で『男』になるにはどうしたらいいの?」
「え……え?」
「今の俺は『殿下』であって『男』ではないんだろ? どうしたら『男』になる?」
「……?」