「セアラ。実家の急用はなんだったんだ?」


 ジョシュア殿下が分厚い資料本をパラパラとめくりながら尋ねてきた。
 遅刻した罰として、ついさっき離れた書庫から私が運んだ資料のうちの1つだ。



 まったく。「実家は遠いんだから間に合わなくても仕方ないから大丈夫だよ」なんてメイドの前では言っておいて、いなくなった途端に「資料本を持ってこい」だもん。
 さすが腹黒王子様だわ!



 そんな恨みは心の中にしまい、普通に返事をする。


「お客様がいらしたので、そのご挨拶に呼ばれたのです」

「お客様?」

「はい。私も行くまで知らなかったのですが、ルイア王国のフレッド殿下でした」

「!」