「セアラが好きなんだよ」


 普段から私をいじめて楽しんでいる腹黒王子、ジョシュア殿下がケロッとした様子でそう告げた。
 この冗談はこれで2回目だ。
 呆れたため息とともに、私は殿下を見上げて冷静に返事をする。

 
「……殿下。前から思っていましたが、女性にそんな冗談を何度も言うのはよくありませんわ」
 
「冗談じゃないけど」
 
「なら悪ふざ──」

 
 そこまで言ったとき、ジョシュア殿下の顔が近づいてきた。
 触れてしまいそうなほどの近い距離で、殿下の黄金の瞳と目が合う。

 
「悪ふざけでも冗談でもない。本当に俺はセアラが好きなんだ」
 
「…………」


 作られたような微笑みも嫌味っぽい笑みもない、真剣な表情のジョシュア殿下。
 でも、それに騙されたりはしない。


 
 殿下……本当にどうしちゃったの?
 いったい何を企んでいるの?



 私は疑わしい目でジッと殿下を見つめ返した。