夏に溶けていく



午後5時。


汗だくで帰ってきた。


5分ぐらいすると紫央も帰ってくる。


「先に風呂入らせてもらうね!」


そしてお風呂から出ると、扇風機の前のローテーブルに氷が置いてあった。


「お先でした〜、お、セットがいいじゃん」


私はセットしてある座布団に座った。


「俺もシャワー借りるな」


そうやってたち上がった紫央。


「どうぞどうぞ」


私の髪はまだ濡れたままだ。


…ドライヤー代を減らしたいからだけど。


タオルでシャカシャカと拭く。


「うわぁ、気持ちいい」


氷をボリボリ食べながら扇風機に当たる。


けど、風と気温は蒸し暑い。



夏だなってなる。


数分すると、紫央も出てきた。


「ああ…、出てきた瞬間生ぬるいな」


そう言って、隣の椅子に座った紫央。


色気がすごい。


これが噂の雫も滴るいい男、なのか…?


なーんて考えたり。


氷をヒョイっとつまんで食べる。


ちょっとずつ髪が乾いてきた。


「ん、冷たい」


「ただ、気温がダメ」


「エアコン付けれないしなぁ」


エアコンは何年も使ってないから起動しない。


まあ、節約にはいいんだけど。


私は久しぶりにテレビをつけた。


別に興味はない。


だけど紫央と話すことがなくなってしまって。


この気まずい空気をどうにかしたかった。


「真夏」


そう言われて横を向くと紫央と目が合った。


なんとも言えない顔をしていた。


真顔のような少し寂しそうな。


でも目が離せなかった。


その目がなんと魅力的だったことか。


どちらともなく体を支えている手が重なった。


「紫央」


紫央の体がゆっくりとこっちに傾いてくる。


今までにないくらい近い距離。


一回、紫央の目を見て目をゆっくりと目を閉じると唇に何かが当たった。


これが紫央の唇だと言うことは言わずとも分かる。



嫌じゃなかった。



目を開けてみると紫央はいつもの目じゃなかった。


なんというか、獣のような。


でも色気は抜けない。


私は拒まなかった。


勢いで、そう言う雰囲気だったからに決まってるのに。


どこか期待しちゃったんだ。


紫央は私を押し倒す。


畳は冷たかった。


何度も求めるように、紫央の食べていたダイス状の氷が私の口の中に水となって溶けていく。


テレビの音がうるさい。


だけど、私と紫央はそんなこと気にしなかった。


紫央の事しか考えれなかった。


氷が無くなった時、私はハッとした。


紫央も我に返った。


「…っ、ごめん…、ちょっと頭冷やしてくる」


そうやって紫央は出て行った。


出て行った直後、頭がガンガンした。


ゆっくりと、布団に転ぶ。


私が寝付くまで紫央は帰ってこなかった。