今から26分前、私は17歳になりました。
今日が誕生日だってのに、誰も祝ってくれない。
同じ誕生日のクラスの女の子は今日、ちょっとお値段高めなコスメを貰うんだとか。
一緒にケーキを食べて、プレゼント貰って、みんなでゲームとかするんだろうな。
学校からの帰り道、私は1人でトボトボ歩きながらそんなことを考える。
そんな今日、私はボロボロアパートに帰って何をするわけでもなくその日を過ごす。
階段を登って、二つ目の部屋。
そこにこもって、何事もなくその日が終わるんだろうと思っていた。
なんだ、あの人。
私のドアの前に寄りかかって座り込んでいる人がいた。
ちょっと様子を見たけど動かない。
寝てるのかな?
「…大丈夫ですか?」
私は少し躊躇いながらも声をかけた。
「ん…」
私と同じくらいの年の男の子。
いや、ちょっと上かも。
顔が赤くて、おでこに恐る恐る手を当ててみるととても熱い。
熱だ。
私はすぐさま家に入って、布団の準備をする。
そして非力ながら男の子を運ぼうと半ば無理矢理立たせて歩かせる。
男の子を布団の中にいれる。
タオルを濡らして額に乗っける。
これでちょっとは熱冷ましシートの代わりにはなるかな。
私は引き出しを漁った。
そこにはお金が貯めてある。
これが貯金全部だけど…、仕方ない。
私は全財産をもってドラックストアに行った。
熱冷ましシートやゼリー、スポーツ飲料などを買って帰ってくる。
「ただいま帰りました〜…」
男の子を見てみると、目を開けていた。
「失礼します」
そう言ってタオルを取って熱冷ましシートをぺたっと貼って、ゼリーもスプーンを付けてお皿を出した。
「食べますか?」
そう言うと、頷いた男の子。
私はゼリーを救ったスプーンを男の子の口に持っていった。
あっという間に全部食べてしまう。
「ゆっくり寝てください」
そう言うとゆっくり目を閉じた。
私は目を開けた。
いや目を開けたってなんだ。
…いや、私寝ちゃってた…!?
慌てて時計をみると、もう8時。
私はどういうことか、布団の中にいる。
男の子はどうした!?
慌てて布団を出て、キッチンの方を見てみると、何やら作業をしている男の子がいた。
起きた私に気付いたようで。
「あー…、勝手にキッチン使わせてもらった」
そう言った男の子の手にあるのはオムライス。
それに気を惹かれて歩いていく。
…じゃなくて!
「もう体調は大丈夫なんですか?」
「おかげ様で」
そう言った男の子の顔はひどく整っていた。
学校でもここまではいない。
有名人かなんだろうか。
そんな、今私、週刊誌に載るようなことしてる!?
男の子は百面相をしてるであろう私に話しかけた。
「礼と言うかなんというか、これ、食べて」
そう私の前にオムライスを出してくれた男の子。
「え、ほんと!?」
そうびっくりした私に男の子は笑った。
「うん、ほんと」
私はスプーンを取り出し、オムライスを一口分掬って口に入れる。
「お、おいしい…」
なんだこの、美味しいものは…!
ちゃんと味がある…!
「それは良かった」
久しぶりの手料理。
思わず涙ぐみそうになるのを堪える。
食べたことあるようなないような味。
「最高…」
一口ずつ味わって食べる。
「そんなに?」
「今日、誕生日なんですよ」
「マジか。誕生日おめでとう」
そうサラッと言ってくれた男の子。
「それ言われたの何年振りか…、嬉しいです」
今度こそ涙が堪えきれなくなってしまった。
「大丈夫!?」
「すみません、うちティッシュがないもんで」
どうすることもできないと言ったような男の子。
「って言うか、冷蔵庫にこんなものなかったですよね?」
「ああ、買ってきた。もちろん、自分のお金」
「すみません、こんなことしてもらっちゃって」
そう私はペロリとオムライスを食べてしまった。
「あのさ」
「なんですか?」
「言いにくいんだけど」
そう言った男の子は言葉が詰まっていた。
「家事は全部する。自分のものは全部払うし、なんならあんたのも手伝う」
なんの話かと思った。
「だからここにいさせてほしい」
「…え?ここ、ボロボロアパートですよ?なんのいいところもないですけど」
「いいの」
「えぇ…?」
「熱の看病もしてもらって、住ませてなんて烏滸がましいことは分かってる。変なことは一切しないって誓うしなんなら、」
まぁ、家事はしてくれてお金も手伝ってくれるって言うなら…
「いいですよ」
「っ、マジ?」
「これからよろしくお願いします」
「こ、こちらこそ、お願いします」
「あ、露川真夏って言います」
「天神紫央、です」
ここから2人の生活が始まった。

