「まだ探してんの?
やっぱり違う学校入ったんじゃないの?」






放課後、花蓮が呆れながら言った。









私は「絶対にいるもん!」と返しながら、
今日も教室から校庭を見渡す












花蓮には、那智くんと出会った日
家に行ってすぐ那智くんのことを話した





もちろん彼氏に振られたことも話したんだけど
私があまりにも嬉しそうに那智くんのことを話すから
「傷が癒えるのが早いに越したことはないね」
と苦笑いで言われた















入学して2週間、クラスにも馴染んで楽しく過ごせているわけなんだけど、肝心の那智くんが見つからない



なんにせよ、うちの学校は1学年12クラスもあるから
入学式のクラス表を見てもキリがないんだよね



何より自分の目で那智くんを見つけたかった





吹奏楽部の花蓮を見送った後、帰宅部の私は
今日は諦めるか…と思い鞄を持って教室を出た












部活動はパッとくるものがなかったし、
バイトも学校生活に慣れてから!とままに言われていたからまだできない、






家に帰っても暇なんだよな〜
あ、図書室で明日の予習をしてから帰ろう









そう思った私は階段を降り、図書室に向かった











扉を開けると、少しホコリを吸い込んでしまって咳払いする










うちの学校は教室や音楽室、体育館は綺麗なのに何故か図書室だけ少し古くて入りにくい









誰も自分から進んでは来ないから、穴場だと思っている




「やっぱ誰もいないか…」















明日の予習をするには英語の辞典が必要で、
辞典が置いてある棚に向かったのだけれど、










奥の椅子で誰か寝ている











目にかかるくらい毛量の多い黒髪に見覚えがあった






「…っ、え…なち…くん?」









シーンと静まり返る図書室に私の声が少し響いた











「なちくん、だよね?」








私の声に確かに那智くんは反応した



静かに起き上がる彼は手を顎につけて
少し考える素振りをした













「君は、あの時の?西宮さん…だよね?」











あの日から数ヶ月も経ってるのに覚えててくれた



ドキドキが止まらなくて、
那智くんに会えたのが嬉しくて、
涙で視界が霞むのがわかる










「…っ那智くん!やっと…会えた」










ぼろぼろ涙を流すながら笑う私に那智くんは、
少し驚いていた
















「ほら、会えたでしょ?」









そう言ってあの時みたいに
少し口角を上げて微笑んだんだ