「っと。とりあえず、名前を言え。」

彼女に腕を引かれ、走った先に入れられたのは、彼女の家…だと思う。

とても大きなマンションの最上階の一角、彼女はそこで1人で暮らしているようだった。


風呂に入れられ、紅茶を出され、今に至る。

やっぱり、ついてくるべきじゃなかったのか…

「……人の名前を聞くのは、普通自分が名乗ってからだと思うのですが」

口答えをしてしまった。
人に逆らったのは何年振りなんだろう

「ははっ、そうね、」

そういって彼女は笑った。

「…っ、」

彼女の目に、吸い込まれそうだった。
片目だけ、確かにそうだ。

——菖蒲色(あやめいろ)…?

唯一当てはまるのがその色だった。
紫とも赤とも言えないこの色は、菖蒲色だ…そう確信した