親の手前これまで通りに振る舞っていた龍二は、長野で二人きりになれるのをもの凄く楽しみにしていたらしい。

 だから今日は朝からご機嫌だったのか‥‥

「愛海は俺のこと好きなんだよね?俺、完全にその気で来てるからね?ゴムもいっぱい持って来てるからね?」

「ゴッ!?」

 なななななんて破廉恥な!公共の場で何言っちゃってるの!?

「もう遠慮しないって言ったでしょ?今までの分もたっぷり可愛がるつもりだから、覚悟しておいてね。まあ、いきなり無茶なことはしないから安心して?」

 覚悟ってどうすればいいんだ?やばい‥‥こういう時はいつも龍二に助けを求めてたのに、これから私は誰に相談したらいいの!?

「か‥‥覚悟ってどうすれば‥‥?」

 背に腹は変えられない。思いきって本人に相談してみた。

「はあ‥‥本当、愛海は可愛いよね。俺に全部任せておけば大丈夫だよ。とりあえず、荷解きを頑張らなくちゃね」

 龍二のアドバイスに従い、その後私は荷解きに精を出した。邪念を払うため、それはもう一心不乱に荷解きした。

 その甲斐あってと言うべきか、そのせいでと言うべきか‥‥一人暮らしの荷物はそれ程多くもないので、引っ越しは滞りなく終了。

 そして迎えた夜‥‥龍二は宣言通りことに及んだ。これに関しても素直にアドバイスに従って『龍二に完全お任せコース』である。恥ずかし過ぎるので詳細は省くが、かなり手加減してくれた‥‥らしい。

「先は長いから、徐々に‥‥ね?」

 この言葉の意味はよくわからないけど、深く考えるのはやめておくことにした。

 入社式までの数日間、龍二はただひたすら甘かった。私達はもう友達じゃないんだと、私に自覚させたかったのかもしれない。

 家の中は危険がいっぱいなので、日中は長野観光をねだった。外ならきっと安全‥‥そう思ったのに、どうやら私の考えは別の意味で甘かった。

 とにかく何かと距離が近い。磁石かな?って程ずっとくっついてくる。人目を盗んでちゅーしてこようとする。何か食べようとするとあーんてしてくる。そして隙あらば甘い言葉を囁いてくる。

「龍二‥‥外でいちゃいちゃするのやめない?」

「無理。可愛い過ぎる愛海がいけない。諦めて慣れた方が早いと思うよ?」

 無理だ。慣れるとか本当無理。でも数日我慢すれば私達は遠距離恋愛に突入する。それまでの我慢だ。今を乗りきればきっとなんとかなる‥‥はずだ。