あ、居る。ふと、目の先にあの人を見つけた。
サッカーしてる、がんばれ。

「ゆう〜?また“例の彼”のこと見てるの〜??」
「っ、⁉︎」
耳元でからかうような声でささやかれて、顔が赤くなる。
「も、もうっ、莉子、からかわないでっ!」
火照った頬に手をやりながら、私は隣でニヤニヤしている友達、真中莉子(まなか りこ)をジロッとにらむ。
すると、莉子はちょっとムッとしながら、
「ゆう、私の話、聞いてないんだも〜ん」
と言ってきた。
「っ、だって.....」
...だって、グラウンドに彼が居たから。


私は、一葉優羽(ひとつば ゆう)。
特徴は、平凡。
可愛くもないし、ずば抜けて何かできるわけでもないから、いつも、穏やかで平和な生活を送っている。
でも、最近は....
「ねえ!結城、こっち見てない⁉︎」
「え⁉︎」
再び、窓の外に視線を落とすと、彼はこっちをじっと見ていた。
パチっ
あ、目があった?どうしようっ...⁉︎
戸惑って、すっと目をそらす。

彼、結城伊央(ゆうき いお)くんは、私のクラスメイト。かっこよくて、笑うとすごく綺麗な結城くん。私は、ずっと彼に恋をしている。