幸先輩が甘く迫ってくるのですが。


「俺にどぎまぎしてるひなみちゃん、もっと見たい」



「っ…!!」



駄々っ子のようにそう言われ、こちらはもう為す術なく赤面するのみ。



「…やっぱり、可愛い。俺の言葉にいちいち赤くなっちゃって…りんごみたいだよ?」



…もう、幸先輩は私をどうしたいの?



どぎまぎなんてとっくのとうに通り越して、こっちは大混乱だっていうのに。



それなのに幸先輩は“もっと”だなんて言う。



「〜っ欲張りすぎです!」



「うん。欲張りなの、俺」



そう言って、けらけらと笑ってみせる幸先輩。



人気のない放課後の教室で、先輩と2人きり。



そんなシチュエーションの中、指を絡めとられてからかわれているなんて、あまりにも現実味がないけれど。



繋がれた指から伝わるその温度に、どうしたって私の鼓動は早まっていくばかり。



「…ね、ひなみちゃん」



「な、なんですか…?」



「今度の日曜日、俺とデートして欲しい」



「っ…」



ストレートもドストレート。



幸先輩の直球なお誘いは、お昼に受けたばっかり。



でも、“連絡する”って言ってたから。



っ…この雰囲気で言うのは、いからなんでもずるすぎるよ…。