幸先輩が甘く迫ってくるのですが。

幸先輩は硬直する私を見て、頬を緩めた。



「っふ…ひなみちゃん、顔真っ赤。ごめんね、ちょっといじわるしちゃった」



「〜っ!“ごめんね”じゃないですよもう…っ!」



だってもう、鏡見てほしい。



「ひなみちゃんが可愛い顔するから、つい」



そう言う先輩の表情、ゆるっゆるだもん。



絶対に悪いと思ってないですよね…?



からかわれたことも、それにまんまと引っかかってしまったことも恥ずかしくて、まともに先輩の顔が見れない。



「ありがとね、来てくれて。嬉しい」



でも、そう言う幸先輩の声があまりにも優しくて。



「…っ、幸先輩はずるいです」



その柔らかい笑顔に、思わず胸がときめいてしまった。



そんな顔されたら怒る気も失せてしまう。



幸先輩の純粋な笑顔には、それくらいの威力がある。



「ははっ、何がずるいの?」



「全部ですよ」



「えー?」



「と、とにかく手放してください…っ!」



さっきからずっと幸先輩の指が絡まったままで、なんかもう色々と限界。



「うん」



その一言に安心して、気を緩めたのがいけなかった。



「嫌だ」



今までの笑顔は消え失せて、幸先輩の瞳がまっすぐ私を見据える。