幸先輩が甘く迫ってくるのですが。


このままシャーペン持ったまま寝てて、万が一どこかに刺さっちゃったら危ないっていうのもあるし…その方がいいよね、たぶん。



「ちょっと失礼しまーす…」



なるべく慎重に、ゆっくりと幸先輩の指先に手を伸ばす。



シャーペンの先に触れて、一瞬で引き抜こうとしたそのときだった。



────え?



するりと幸先輩の指が自分の指に絡まった。



もしかして、起きてるの…?



「…ゆ、幸先ぱ───」



「寝込み襲うなんて、大胆だね」



気づけば幸先輩の綺麗な顔が目の前にあって、後ずさろうとしたけれど後ろにある椅子が邪魔で動けない。



そういえば、寝込み襲うとかなんとかって言われてなかった…?!



「ち、違っ…ちょっとシャーペンをお借りしようとしただけで…!」



何とか弁明しようとするけど、逆効果なんじゃないかな。



「大丈夫」



幸先輩はにやりと笑い、私の耳元に顔を近づけて。



「ひなみちゃんに襲われるんなら本望だよ」



前みたいに、低くて甘い声を落とした。



その瞬間、全身の熱が駆け巡る。



「っ…な、!?だから、それは誤解で…っ」



耳だけがやたら熱くて、触ったら火傷してしまいそう。