幸先輩が甘く迫ってくるのですが。


どうやら窓際の席のようで、半開きになっている窓の隙間から吹く風がカーテンを揺らしている。



幸先輩の茶色い髪もその風に吹かれていて、まるで映画やドラマのワンシーンみたいに映った。



「もー…私が来た意味ないじゃないですか」



ぼそりと呟き、先輩の一つ前の席に腰かける。



先輩の下敷きになっているのは…学級日誌?



チラッと見てみると、まだ書き途中らしい。



よく見れば、先輩の指にシャーペンが挟まっている。



うーん…ほんと、なんで私を呼んだんだろう?



何か用があってのことなんだろうけど、どうせ大した話じゃないんだろうな。



だって寝ちゃってるし。



ちょっとでもドキドキした私がバカみたいだ。



…って、ドキドキしたって言っても、別にそういう意味じゃないけどね!?



「…私、誰に何を弁解してるんだろ?」



うん、帰ろう。



せめてメモ書きだけ残して、あとで謝ればいいよね。



私が謝るのはなんか違う気がするけど、そこは一応先輩だからってことで。



バックからルーズリーフを1枚取りだし、筆箱を取ろうとして思った。



…幸先輩が持ってるシャーペン借りちゃおうかな?