「ひなみも彼氏作れば?」



作れば?って…そんなさらりと言われても。



「作ろうと思って作るのは、なんかなぁ」



「…ひなみって案外ロマンチストだよね」



「えぇ?そんなことないよ…って、やばいよ怜美。もうそろそろ先生来ちゃうんじゃない?」



視界の隅に移った時計の針がSHRの時間を刺していて、怜美にほらと指さす。



「やば、ほんとだ。じゃあ行ってくるね」



「うん、楽しんで!」



「ありがと」



怜美はにっこり幸せそうな笑顔を残して、颯爽と教室から出ていった。



ふふ、怜美ったら乙女の顔しちゃって。



こっちまで幸せオーラにあてられてにやけてしまう。



担任の先生がやってきてSHRが始まり、次の日の連絡事項を話していても、さっき話していたことが頭から離れないでいた。



彼氏…彼氏ね。



考えたことがないわけじゃない。



そりゃ、1度は妄想くらいしたことあるよ?女の子だもん。



でも…いざ自分がとなると、どうも現実味に欠けるというか。



恋とか愛とかあんまりピンとこないまま、16年間過ごしてきた。



つまり、初恋も初カレもまだってこと。