父とのある会話だけを私は鮮明に覚えている。
どんなに時が経とうとも決して忘れることはない。
忘れられるわけがないのだ。
あれはどこか遠い海辺を一緒に歩いていた時だった。確か風が強くて、塩の濃い香りが辺りを漂っていた。
「死の呪いというおそろしーものを知ってるか?」
「呪い?何それこわい!!」
「—にはやはりこわいか…その呪いをかける者がこの世の中にはいるんだ」
「えー!そーなの!とーちゃんもかかっちゃう?」
「…ははは。とーちゃんは最強だから大丈夫だぞ」
程なくして父は亡くなった。突然の急死だった。