「神崎さん?」
「もうすぐ朝礼だよ〜!遅刻したらダメだよ、一之瀬くんはまだ新人さんなんだからっ!」
神崎さんもすぐそばにいる。一之瀬さんを追いかけてきたんだ。よかった、これで顔を見られずに済む。そう思った矢先、
「山下さんも一緒に行きましょう。」
そんな言葉と同時に思いもよらず後ろへ腕を引かれ、力の入っていない体はいとも簡単に一之瀬さんの懐へ倒れ込むようによろめいた。
「わ、山下さんすみません」
焦って思わず顔を上げれば、驚いた表情を浮かべた一之瀬さんと目が合った。けれどその表情は、私のボロボロの顔を認知した矢先少し歪んだ。
「なんで泣いて…」
私は咄嗟に一之瀬さんを押しのけると、2人をおいてその場を去った。
見られた、一之瀬さんに、また。泣いてるところを。情けない、情けない情けない。いい大人がこんなに泣いていいわけないのに。
そのままオフィスへ戻れる訳もなく、私はひたすら階段を駆け上がり、人気のない屋上へと足を踏み入れた。
スカートに入れていたスマホを取り出すと、課長へ体調不良で遅刻するとメールを送り、私はその場にしゃがみ込んだ。組んだ腕の中に顔を埋めると視界が真っ暗になる。



