優しい愛で溶かされて

❁⃘*.゚

「ん……」


冷たい風が私の長い髪を少し強めに煽って、その髪は容赦なく頬をたたいた。その痛みで、手放していた意識が戻る。


「あ、山下さん!起きた?大丈夫そう?」

「……いちのせ、さん…?」


心配そうに私の顔を覗き込む黒い影。まだ少しクラクラする視界の中、ぼんやりとそう呟くと、なんだか寂しそうに笑う声が鼓膜を揺すった。


「はは、残念。赤井です」

「…しゅ、主任?!」


驚いて大きく目を見開くと、ぽりぽりと居心地悪そうに頭を搔く赤井主任の姿があった。


「す、すみません…っ。もたれかかってしまっていたみたいで…」

「いーえ。よかったよ、起きてくれて。なかなか起きないから心配してた」


辺りを見渡せば、今私がいる所はさっきの居酒屋から少し離れた公園だとわかった。気を失った私をこんな所まで連れてきて、ベンチに座らせてくれた挙句、起きるまで傍にいてくれたなんて。

ふと足元をみると、赤井主任の上着が掛けられていることに気づき、慌てて上着を赤井主任へと被せた。


「う、上着…!寒かったですよね?すみません…どうしよう。ほんとどうお礼をすればいいか…」

「大丈夫だよ。寒くない。山下さん足元寒いでしょ。」


そう言って私が返した上着を、赤井主任は再び足元へ優しく掛けると、続けて口を開いた。


「お礼なんていらない。むしろこうやって久しぶりにゆっくり話す機会できて嬉しいよ」


「赤井主任…」


いつまで経ってもこの人は本当に暖かい人だ。確か私の期の歓迎会の時も、赤井主任が気にかけてくれたんだっけ。


「いつも助けてくださってありがとうございます。でも、ご迷惑をおかけするのは嫌なので、私なんかの事は気にしないでください」


赤井主任が掛けてくれた上着の上で握った拳を見つめながらそう言うと、赤井主任は私の顔を強引に覗き込み、分かりやすく不機嫌そうな表情を浮かべた。


「〝私なんか〟とか言うの禁止。山下さんはもっと自分に自信もって。」

「でも、」

「それに、俺は迷惑とか思ったことないよ。」


真っ直ぐ見つめられながら放たれた言葉は私の荒んだ心に優しく染み渡る。


「ありがと、ございます。」