❁⃘*.゚
「あれ、山下さんお昼は?」
なんだか朝から色々あったせいかお腹が空かず、誰もいない静かなオフィスでパソコン作業をしていると、背後から赤井主任がそう声をかけてきた。
「赤井主任、お疲れ様です。なんだかお腹空かなくって。赤井主任はお昼食べられたんですか?」
「俺今ちょうど営業から戻ってきたところでさ、今から食べるんだよ」
「営業、お疲れ様でした」
私と赤井主任は同じ戦略企画課だけど、その中でも赤井主任は営業部門配属で、期待の新鋭。若いのに早々に主任に昇進したすごい人。明るく人懐っこく、それでいて周りをよく見ていて、私なんかのこともよく気にかけてくれている。
「お腹空かないって体調でも悪い?お腹痛いとか?」
「あ、いえ!体調は悪くないので大丈夫です」
早くお昼を取りたいだろうに私がめんどくさい事を言ってしまったせいで、気を遣わせてしまっている。
「じゃあこれ、またお腹空いてきたら食べて」
そう言ってデスクに置かれたのは可愛らしい見た目のクッキー。
「かわいい…」
「営業先でもらったんだけど美味しかったんだ。山下さんも食べてみて」
「ありがとうございます」
この会社に入社してから、こんな風に気にかけてくれる人は赤井主任だけだった。毎日苦しくてもここまで何とか頑張ってこれたのはこの人のおかげでもあると思う。
ひらひらと私に手を振りながら赤井主任はオフィスを出て行った。



