美しい桜の花びらが舞う春の始め。


私は、ひとつの和室で初めて会う人にある申し込みをしていた。



「……旦那様。私と、離婚してください」



麗らかな春にはとても似つかない残酷な言葉を旦那様に投げつけた。


シン、と静まり返った部屋の中は自分の心臓の音と旦那様の息づかい、柔らかい風の音しか聞こえない。


突然のこの申し出に、旦那様はどう思ったのだろう。


なんで、私の心はこんなにも震えているのだろう。



「……わかった。ただし、離婚するのはお前の20歳を迎える誕生日だ。それ以前に離婚することは許さない」



私は旦那様の言葉に驚いてゆっくりと顔を上げる。


太陽に照らされた肌は日焼けを知らない陶器のようなきめ細やかなもの。髪色は人間のものとは思えないほど美しい色をした金色。


日本人離れした水色の綺麗な目。


着物から見える体型はがっしりとしていて男らしい。