陽気なドクターは執着を拗らせている。



「妻のことだが、治してくれ。俺は老後もずっと妻と……陽子と一緒にいたい……金ならいくらでも払うから……頼む……」


 部長は綿谷先生に頭を下げた。


「僕が奥さんを診てもいいんですか?」

「綿谷先生しかいない……キミしか妻の体のことは分からない……」

「分かりました。では、単刀直入に言いますが、薬を飲まなければいつ、心筋梗塞に陥るか分かりません。明日にでも早急に通院させてください」

「わ、わかった……今日はもう診れないか?」

「部長今から仕事なんですよね? 僕は今日仕事休みですが、奥さんが通院に来られるなら武平さんの時間だけでも、僕が診ますよ」

「仕事は有給にしたんだ。妻と一緒にすぐに病院に向かう。綿谷先生、よろしくお願いします」


 綿谷先生は部長の無茶苦茶なお願いにフッと笑みを零した。


「奥さんの部長への愛は執着愛なのかもしれないですね。奥さんは僕が目指している究極の恋愛像です」


 ――と、部長の奥さんの愛について述べたあと、「分かりました。僕もすぐに病院に向かいます」と、席を立った。