陽気なドクターは執着を拗らせている。



 部長の奥さんは凄い。
 私は部長の奥さんのように寛大にはなれない。


 ましてや、定年退職後はずっと傍にいたいなどとは、絶対思わない。どれほど器が大きい人なのだろう。


 部長は綿谷先生の言葉を聞いて、「申し訳ない」と、綿谷先生に頭を下げた。


「宇野女も……すまない」


 部長からの謝罪の言葉が聞ける日がくるなんて思っていなかった私は、散々私がしてきたことの罪悪感が涙と一緒に溢れた。


「……部長だけが悪いんじゃないんです。私は部長と奥さんに別れてほしいと願っていました。自分勝手なことばかり思っていました。綿谷先生から部長の奥さんのことを聞いた時も、部長が好きだからという理由で部長との距離をすぐに切れませんでした。私も同罪です……」


 声が震える。

 でも、言いたいことは全て言えた。

 部長も涙を流しているようで、鼻を啜る音が聞こえてくる。大の大人が二人で大号泣。人目につきにくい隅の席に座ってよかった。