部長は唇が噛み切れそうなほど、歯で食いしばっていた。そして、歯型がくっきりとついた状態で、
「……綿谷先生のところには行くなと言っただけで、他の病院に行くなとは言っていません。何故、治ったなどと言ったのか……俺は妻じゃないから分からない」
無責任な言葉を吐いた。そんな部長に綿谷先生は大きなため息を吐く。
部長は綿谷先生の態度が気に入らないようで、イライラしているのが見て分かる。
「僕はずっと奥さんのかかりつけ医でした。体のことを把握しつつ、薬も変えて具合を見てきました。処方した薬ももう切れているはずです。僕が嫌なら、僕じゃない内科の医者に情報を引き継ぎますから。奥さんを今まで通り東医療センターに通院させてください」
「…………俺はね、あなたがかかりつけ医で、凄く親身になって見てくれていると嬉しそうにしている妻を見てホッとしたんだよ。嬉しかった。けれど、うちの部下と交際しているのは許せない。見損なったよ」
部長は怒りに満ち溢れた目で私を見る。
部長が言う『うちの部下』は私のことだろう。



