陽気なドクターは執着を拗らせている。



 この自動ドアを抜ければ綿谷先生がいるはず。それまでの我慢だ。


 部長と並んで歩き会社内から出る。けれど綿谷先生の姿はなく、嫌な不安が一気に私の心にのしかかる。


 綿谷先生? どこいったの? なんでいないの。そんなことを思いながら辺りを見回すも、私を抱く気満々の部長の足は前へ前へと進んでいく。


 ……どうしよう、逃げた方がいいかな。部長の足の速さなんて分からないけれど、全力疾走したら部長に勝てるかもしれない。


 足を止めた瞬間、私の肩を綿谷先生がポンと叩いた。そして「ありがとう」と小声でお礼を言われた。


 綿谷先生は部長の腕を掴んで、「武平部長、お久しぶりです。綿谷です。奥さんのことについてお尋ねしたいことがあるので、少々お時間いただいても良いでしょうか?」と尋ねた。


 部長は綿谷先生の顔を見るなり、私に『やってくれたな』とでもいうような目を向ける。そして、綿谷先生に視線を戻し、


「……尋ねたいことってなんですか?」


 質問をし返した。