もちろん、部長の力に勝てたことなんてない。この場で襲われたりなんてしたら拒否できない。
私に近づく部長に、一か八かの覚悟で聞く。
「部長……外……行きませんか」
震える声でそう発すると、私を襲う気満々だった部長は、気だるそうに顔を歪めた。
「まだ誰も来る時間じゃない。心配すんな」
「で、でも……さすがにここでは無理です……」
部長の唇が私の唇に触れそうになった瞬間、「うん、うん、はいよー、俺も愛してるー」と、惚気ながら部署内に入ってきた矢田。
部長はすかさず私と距離を置いた。
矢田がいつもより早めに来てくれたおかげで助かった。
「部長おはようございますーあれ? 宇野女?」
部長が自分のデスクに戻っている隙に、矢田は「出ろ」と、私に親指で合図をした。
矢田は分かってて来てくれた。きっと、綿谷先生が連絡をしてくれたんだ。



