先に部長との関係性を終わらせたのは私だ。


 けれど、もう少し粘ってくるかと思っていたのに、部長はこうもアッサリ他の子に乗り換えてしまった。


 今日一日働いてみて分かったことは、部長は私と会話しようとも、目を合わせようともしない。それ所か私に回ってくるはずだった仕事を別の人に割り振っている。


 私は仕事さえ回してもらえない。

 耐えられなくなり、部長と話をしようと近寄る。


「あの、私にも仕事を分けて下さい」

「それなら矢田の仕事を分けてもらえば良いだろう。あ、言い忘れたが、おまえ来月から矢田と一緒に異動だからな」


 部長は私の目を見ることなく、当たり前のようにそう告げた。本当に私のことはいらなくなったらしい。


 こんな男の軽口に乗ってしまった私は大バカモノだ。


「……なるほど、今度は釜橋さんってわけですね」


 睨みながらそう問いかけると部長は「てめぇも矢田とデキてんだろうが」とボソッと吐き捨てた。


「矢田じゃなくて、奥様がかかりつけなさっている担当医の綿谷先生と、ですが!? あ、あと、奥様部長の不倫に薄々気付いてらっしゃるようなのでお気をつけて!」


 部長の机をバンと勢いよく叩き、自分のデスクに戻る。


 私がやらかした事により、部署内の空気はシーンと静まり返ってしまった。