勢い任せに拳で机を叩くと、隣にいたカップルが驚いたように何事かといった様子でこちらを見てきた。



「き、杏花ちゃん、落ち着いて…」


「だって一応あれ、私にとっては初めて告白されたっていう貴重な初体験なんだよ!それをあいつは…くだらないゲームなんかで汚しやがって…。許せない!こうなったら、復讐してやる!」


「復讐…?」


「そう。あいつは私が真相を知っているとはまだ気づいていないから、それならこの“一ヶ月間お試しカップル”を利用してやるの。あいつを私の虜にさせて、そして一ヶ月後の4月1日、こっぴどく振ってやる!あいにくその日はエイプリルフール。私が嘘をついたって責められる筋合いはない日。あいつを…天峰玲央を落としてみせる!」



嘘から始まった関係で本当の恋心を自覚した天峰くんが、どんなに嘆いたってもう手遅れにしてやる。


天峰くんの告白の返事に頷いてからの、エイプリルフールの嘘だとネタバラシをして、天峰くんに屈辱を味わせる。


本気で好きになってしまった私に逆に騙されていたと知れば、天峰くんだってきっと傷つくに決まっている。



天峰くんが私に惚れれば私の勝ち、なんの気持ちの変化がないまま天峰くんの手のひらで踊らされエイプリルフールを迎えてしまったら私の負け。


つまりこれは、どれだけうまく天峰くんを騙せるかの恋愛バトルだ。