翌朝。黎矢の姿が無かった。


「あれ、黎矢は」

「さあな。寝坊でもしてるんじゃねーの」

「うちらも遅刻しちゃうし、先行こっか」

「ああ」


当たり前のように3人で通ってた学校。柊二と2人ってのは新鮮ではあった。

教室に着き、しばらくしてHRが始まる予定だった。
まだ黎矢の姿はない。どうしたんだろう?

そんなことを思ってると、担任がやってくる。何故か慌てているようで、息を切らしている。


「心して聞いてくれ。このクラスの野木が亡くなった」


は?人気者の死ということで、クラスはざわめいた。


「何者かに公園で刺されたらしい。凶器となった刃物は持って帰ったみたいで、見当たらなかったそうだ」


私は振り返って、黎矢の机を見る。
もうこの世にはいない、帰ってくることもない。

教室内では、すすり泣く女子の声が聞こえる。男子は泣くわけにいかない、とばかりに下を向いて悲しんでる様子だった。
無理もない、人気者の死はそれだけ影響力がある。

私は何でか涙が出なかった。悲しいことは悲しいのだけれど、なんかもう色々通り越しちゃって。


その日の昼休み。1人でいるのが怖くて、柊二とお昼ご飯を食べることにした。


「珍しいな、誘ってくるなんて」

「なんか…心細くて」

「まあそうだよな、幼なじみ亡くしてるんだ。無理もない」

「その割には柊二は悲しそうじゃないね」

「ポーカーフェイスと言ってくれ。俺だって悲しいよ」