初夏、夏の日差し。顔を上げれば眩しくて、手で反射的に目を覆ってしまう。梅雨の時期とは思えない晴天だ。
「あっつーい!」
私は黎矢と柊二の2人と登校しながらそう嘆く。
「夏だねぇ」
黎矢が呑気にそう言う。こんな暑いというのに、いつでも爽やかな男だ。明るくて、優しい、そんな彼が好きだ、とか。
この2人とは、小学校からの腐れ縁だ。家も近く、部活のある放課後はともかく、朝はずっと3人で登校してきた。
「今日の英語って小テストあったっけ?」
「あるよ、お前勉強してないだろ」
柊二の的確な指摘に頭を抱える。
「うわー、あるのか!昨日眠過ぎて、日付変わる前に寝ちゃったんだよー」
「ドンマイ!俺は完璧に復習してきた!」
「陽キャのくせに勉強意外とするのなー」
「陽キャ馬鹿にするなー?」
黎矢は明るく笑う。クラスでもこんな感じで、人気者だけど、普通に私達と関わってくれる。
「柊二は完璧なんだろうなぁ」
「あ、俺?別に復習なんかしてないけど」
「うわー、地頭良い自慢だぁ」
柊二は文武両道で端正な顔立ち。ただ、口を開けばちょっと口が悪く、寡黙な奴だからか彼女はできない。
学校に着いて、教室に入る。
「黎矢じゃん!おはよー!」
「おはよー皆の衆!」
「なんだよそれー」
クラスの陽キャ男子達の元へ、黎矢は紛れていった。
私と柊二も各々席に着く。と言っても、隣の席なんだけど。
「英語のテスト、カンニングさせてね!」
「させるかボケ」
怒られた。まあそりゃそうだ。私だってガチで言ったわけじゃない。1時間目まで時間はあるし、付け焼き刃程度の勉強はできるだろう。留年はしたくない。黎矢と柊二と進級したい。