「…なくるちゃん、お願い!」


部屋着姿のわたしに向かって顔の前で手を合わせるのは、姉のあいくちゃん。


「どうしても行かないとだめ…?」

「うん!急遽、1人これなくなって…!インフルだって〜…」

「暖かくなってきたけど、最近また流行ってるってニュースで言ってたもんね」

「だから、お願い〜!なくるちゃんしかいないの〜!」


わたしに泣きつくあいくちゃん。

姉の威厳ゼロだ。



わたしの名前は、日南(ひなみ)なくる。

榮林(えいりん)高校に通う、高校2年生。


とはいえ、今は春休み。

この春休みが明けたら、高校3年生だ。


そして、わたしにせがんで離れないあいくちゃんは、わたしの3つ年上で現役女子大生。


2年前から、あいくちゃんと実家で2人で暮らしている。


両親は、今地方に住んでいる。