吸血鬼のいないコンビニを通り過ぎる。
カランコロン、私の下駄の音。
さすがにちょっと疲れた音。
浴衣の私がコンビニ前を通過したよ?
吸血鬼……なんでいないの。
「此処で大丈夫。わざわざ、ありがとう」
交差点で彼に言った。
家の前で、彼と一緒のところを見られたらお父さんがまた泣いちゃいそうな気がしたから。
「あ、あの……月ちゃん」
「え……」
この人は私の名前、知ってるんだ。
私、下の名前をこんな風に男の子に呼ばれるのは初めてかもしれない。
吸血鬼にこんな風に呼んでほしいな。
あの人は私の名前なんか知らないよね。
ただの客だもん。
吸血鬼は、客の名前なんか知らないよね。
「俺と付き合ってくれませんか?」



