でも、雨と花びらは撃たれ落ちていく……。
黒い髪も黒いトレンチコートもびっしょりだ。
いつも優しさを漂わせてる彼から、今は生を感じない。
絶望のような絵図なのに……どうしてか彼に美しさを感じる……。
切れ長の瞳も整った鼻も、冷たい雨に晒されて……。
彼に美しさを感じた時、
あぁ……人間じゃないんだなって……私はすごく思った。
雨のなか、ベンチに座って桜を見る人間だって、いるかもしれない。
でも、私は彼の、その姿が遠く遠く遠く感じてしまった。
その時、小さな雷が鳴った。
「きゃ……っ!」
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