少し走った。
カーディガンじゃ、少し寒くて失敗したかなって思う。
可愛い雨用ブーツで公園のレンガの道を歩く。
暗い……。
怖い……。
「あ……」
丘の公園の一番の丘の上に、吸血鬼がいた。
……彼は傘も差さずベンチに座って雨に撃たれてた……。
もう桜は沢山散ってしまっている。
桜は雨に落とされて、風に揺さぶられて落ちていく……
少しだけ桜の花びらが風に揺れても、雨が落とす。
それを、彼は見ていた。
彼は右手を少し上げて、桜の花びらを受け止めるようにして上を向いている。
優しい表情だった――。
誰かと会話するように、優しい顔。



