私のふれあいと言ったら、お母さんの腕に絡んだり、弟とソファでコチョコチョしたり。
お父さんとは会話くらいで。
家族以外で、手に触れる事なんか……ない。
手を繋ぐって……どんな感じなんだろう。
私はまだ、自分の脳みそが正常ではないな――と自覚しながら学校へ行けるようになるまで数日過ごした。
◇◇◇
そして、私が学校へ行けるようになった朝。
お昼ご飯にパンを買おうかと思ったら、ヨレヨレになった吸血鬼が黒いトレンチコートを着て事務所から出てきた。
朝は結構混んでるから、この列から外れたらもう時間がない。
でも……。
「ごめんねー! お疲れ様! 本当に助かったよ! ゆっくり休んでね! しゃっせー! おはざす!」
店長さんがレジをしながら、帰ろうとする吸血鬼に声をかける。
「ひゃい……おっ……した……」
あぁ……あの日から、私がインフルエンザになって、そして今日まで休みなしで働いていたの?
ヨロヨロと店を出ていく吸血鬼を、列に並んだ人達も心配そうに見てる。
私は列から外れて、パンを戻してコンビニから出た吸血鬼を追いかけた。



