私たちのキョリ

 拓海の言葉にはじかれたように顔を上げた私は……次の瞬間、拓海に抱きしめられていた。

「かっこわるいな、おれ。先に言われるなんてさ」

「え……?」

 耳元でつぶやかれた言葉を聞いて、私は戸惑う。

 そんな言い方、まるで……。

「ほんとは今……美波に告ろうとしてしてたんだよ」

 ……うそ 。

 どういうことなの……?

「拓海は、一緒に帰るのやめないかって……」

「ごめん。おれ、美波はおれのことを何とも思ってないって、恋人同士に勘違いされるのなんかいやなんだって、自分に言い聞かせようとしてたんだ。……変に告白して拒絶されて、ショックを受けるのが怖かったから。……ほんと、かっこ悪いよな」

 でも、と一呼吸おいて、拓海は私の背中に回していた手を放した。

「勘違いされたままでいるのだけはいやだったんだ。昨日の言葉は、本当のおれの気持ちじゃないから」

 そう言った拓海に、まっすぐ見つめられる。

 拓海は、私の好きなやさしい笑顔で、

「好きだよ、美波。小さいころから、ずっと」

 そう、言った。