さて困った。これではビオレッタがラウレルを何とかするしかない。
 とりあえず彼と話をしよう。もう一度、お引き取り願おう。

 彼がオルテンシア城のあるオルテンシアの街出身というのは有名な話だ。ということは、オルテンシアの街に彼の家も残っているのではないか。
 オルテンシアの街は、このグリシナ村よりもはるかに都会で住みやすいそうだ。この村でビオレッタやオリバに迷惑がられ続けるよりも、ずっとちやほやとしてくれるだろう。
 彼が街へと帰ってくれることを願って、ビオレッタはラウレルの姿を探した。

 けれども、どこを探しても彼の姿は見当たらない。村の皆に聞いても「さっきそこにいた気がする」とか「あそこで喋ってたような」とか目撃情報ばかりなのに、ビオレッタが探しに行くと忽然と姿を消しているのだ。

「勇者様なら、村長んちの屋根を直してるらしいぞ」

 シリオから有力な情報を得たビオレッタは、急いで村の一番高台にある村長宅へ向かった。