こじらせ男子の橘くんはワケありでした。



その純粋な瞳に見つめられると、

嘘をつけない。


「そうだ、名前教えてよ!」


「個人情報なので、すいません。」


─うわ、目逸らした。


─もしかして警戒されてる?


「そんな警戒しなくても、取って食ったりしないよ。命の恩人の名前知っておきたいだけ。」


「…橘朔夜(たちばな さくや)。」


風で前髪が揺れている。

少し気だるげに話す君は、

歳のわりに大人びている、

というか冷めている。