「待ってくれ!」
大きい声で叫んだからか、通行人達も多数振り向いた。
だが、今はそんなこと気にしていられなかった。
「待ってくれ、香具夜!」
絞り出す様に叫んだ。
そしてその声は青年に、香具夜に確かに届いた。
振り返ったのだ。
香具夜はいきなり名前を呼ばれ、きょとんとした顔で自分の名前を叫んだ本人を足を止めて見つめていた。
「え?誰?なんで僕の名前を?」
一応一度死んだ身ではあるので、月の国に知り合いはほとんどいないはず...。
ではなぜ目の前にいる人は僕の名前を知っているのか?
自分を呼び止めた人物をまじまじと見た。
短い黒髪にオニキスの様な色をした切れ長の瞳、自分よりも高い身長。
まさか...
「...翻羽なのか?」
泣きそうな震える声で問いかける。
