紀和くんは、半分まぼろし




───ひみつ、そのいち。

高校一年生の冬から、わけあって、一緒のお家に住んでいること。


「仕方ないから、手始めに抱きしめてやろうか」

───ひみつ、そのに。

ふたりのときのきわくんは、学校のかれとはあまりにも違っていること。

「無視するんだ? “振り向かせたい相手がいるから、色々とれんしゅうしたい”って言ったのだれだっけ」

───ひみつ、そのさん。

甘いあれこれは、あくまですべて、わたしのための“れんしゅう”なこと。

「……わた、し」

「それなら、もう少し向上心もつべきだよな」

「むずか、しい」

「なにがむずかしいんだよ」

「ぜんぶ、」

「もういいよ、なんかだるくなってきた。今日も、どこまでするかはおれが決める」

「……っ、う」

「う、じゃない。ありがとうございます、だろ、むく」

きわくんが、支配者のごとく、ちいさくわらう。

ゆっくりとベッドのうえに押し倒されて、薄暗いなかでかれを見上げた。

からだの距離が縮まるなかで魔法にかかるように目を閉じたら、唇は不思議なくらいやさしく重なった。

触れるだけのキスにだって、ぜんぜん慣れない。

そもそも、きわくんとキスをしているということが、いまだにあまり信じられないし、信じすぎてはいけないことなのだ。

本来ならば、ぜったいにかかわることなんてなかったひとだ。

「むく」

ひみつ、そのよん。

「……な、に。きわ、くん」

到底、口に出しては言えない。だけど、きわくんのことだから、きっと、半分くらいはお見通しかもしれない。

「舌、だして。れんしゅうなんだから、おまえ、もう少しがんばりなよ」


───もうすでに、きわくんで、わたしのこころとからだは、いっぱいいっぱいなこと。