先生の事はよく見ていたから、先生がどういう女性が好きかすぐにわかった。先生の隣にはいつも華やかな綺麗な女性がいた。女性として私は全く先生の視界に入らない存在だって痛い程知った。だから、先生に関心のないふりをした。みんなが先生の容姿を褒めても私は決して加わらなかった。先生の事が好きか嫌いかと聞かれれば、ハッキリと軽薄な人間は嫌いだと答えた。そうする事で私は自分の身を守った。

本当、私はひねくれものだ。愛情に飢えた人間は心が捻じ曲がりやすい傾向にある。仕方ない。私はそうやって育ってしまったんだもの。

シングルベッドに横になりため息をついた。

先生と結婚だなんて……。

しかも、絶対に私を好きにならないからって酷い。酷いと思うのに、それでも先生と一緒にいられるなら恋愛感情のない結婚をしたいと思っている。

バカだな、私。

先生が私の本当の気持ちに気づいたら、先生は私に興味を失うのに。先生が私を必要だと言ってくれたのは、私が先生に恋愛感情がないと思っているから。私の気持ちに気づかれた途端に関係が終わる。そんな危ない結婚できる訳ない。

もう一度ため息をつくと、大学時代からの友人の舞子(まいこ)からメッセージが来ていた。

『明日はよろしくね』

明日はお菓子教室のアシスタントを頼まれていたんだった。
舞子に北沢先生の事を話したら驚くだろうな。